森林施業研究会シンポジウム「緑のリハビリ・癒しの林学」に参加し、学び、論議し、悟り、決意しよう!
世の中は、かつての自然環境を取り戻す「自然再生」がブームとなっている。先の国会では「自然再生推進法」が成立し、行政やその外郭団体、土建業者、それらの息のかかったと思われるNPO組織や市民団体(?)が第二の公共事業とばかりに、その利権に群がろうとしている。各種自然保護団体は、その動きに戸惑いつつも、その有効活用を模索している。
しかし、反省なき自然環境の修復・再生は、結局のところ豊かな自然環境も、地域社会も、それに寄って立つ人の心も取り戻せない。技術なき事業は、将来に禍根を残すことになる。高度経済成長とその後の爛熟のバブル時代に、己が欲望(札束に)に目がくらみ、破壊し、改変した森林、河川、湖沼、里山、農村風景を単なるノスタルジアで取り戻そうとしても、そう簡単ではない。なぜ、略奪的な林業を展開してしまったのか?なぜ、無理を承知で、高海抜地、多雪地帯に拡大造林を推進したのか?この間の林業技術とは何なのだったのか? こうした問いと反省、再生の理念、将来構想なくして、自然環境の再生、その上での持続可能な林業の発展はありえない。壊してしまった自然林の再生には、膨大な資金と時間、そして技術が必要となる。スギ・ヒノキの代わりに、広葉樹を植栽すれば済むというものではない。今回のシンポジウムでは、自然林の再生に取り組む事例の紹介を通じ、そこに横たわる諸問題について論議し、林学の役割とその方向を共に考えたい。
第8回森林施業研究会シンポジウム
日時:2003年3月30日午前9時〜12時まで
場所:岩手大学農学部G29講義室
テーマ:「緑のリハビリ・癒しの林学」
話題提供:
(1) 魚を育てる森林づくり−水辺林の再生と修復−
北海道林業試験場 長坂 有
(2) 世界遺産周辺地域の自然林の再生と技術的な問題
森林総研東北支所 正木 隆
(3) 人工林の皆伐跡地における自然林の再生
徳島大学 鎌田磨人
(4) 富士山再生
NPO富士山自然の森づくり 渡邊定元
(5)
広葉樹の植栽導入における生態遺伝学的諸問題(問題提起)
森林総研 金指あや子
問い合わせ先:森林施業研究会事務局
鈴木和次郎(wajiro@ffpri.affrc.go.jp)
大住克博(osumi@ffpri.affrc.go.jp)
森林施業研究会世話人会(全国交流会)に多数の参加を!
シンポジウム前夜(29日)に、施業研究会恒例の世話人会(全国交流会)が今年も開かれます。今回は、岩手県林業技術センターの諸氏が幹事役を引き受けてくれます。例年、交流会は、多数の参加の中、混乱の内に終始しておりますが、全国の新たな林学・森林管理を志す研究者・現場技術者のネットワークは、これを契機に確実に広がり、根付いております。酒が飲めるものも、飲めないものも、老若男女隔てなく、夢を語り、憂さを晴らす交流会に参加し、翌日のシンポジウムへの心構えをしましょう。参加希望者は、3月20日までに交流会幹事まで、連絡を入れておいてください。
全国交流会幹事
成松眞樹(岩手県林業技術センター)
e-mail:
m-narimatsu@pref.iwate.jp
交流会会場に、下記の店を確保しましたのでお知らせします。
日時:3月29日(土)(See attached file: 2doburoku.jpg) 19時
店名:「本家南部どぶろく家(や)」
住所:盛岡市大通2-6-21
電話:019-622-9212
会費:4千円(飲み放題)
予約者名:岩手県林業技術センター 成松眞樹
森林施業研究会研究レポート
山形県における「ナラ類集団枯損」被害林分の特性とその復元
三浦直美・斉藤正一(山形県森林研究研修センター) 約18MB
このファイルはPDF形式で作られています。表示・印刷するためにはAdobe
Acrobat
Reader(無料ソフト)が必要です。詳しくはAdobe社のホームページhttp://www.adobe.co.jp/acrobatをご覧下さい。原稿をもとにPDF書類に変換したためファイルサイズが大きくなってしまいました。Microsoft
Wordをお持ちの方はこのファイルをダウンロードしてご覧下さい。サイズは約2.2MBです。
国際研究集会 OAK 2003 JAPAN についてのお知らせ
金指あや子(森林総研 森林遺伝研究領域)
1.はじめに
皆様もご存じと思いますが、IUFRO(国際林業研究機関連合)という国際組織があります。このIUFROの下にはさまざまな専門分野の研究者が集まって作る部会がたくさん組織されており、それぞれ自主的な活動を行っています。ここでご紹介する「OAK2003
JAPAN」は、このような部会の中でナラ類を研究対象としている遺伝と造林部門の部会が合同で開催する国際研究集会です。具体的には「Genetics
of Quercus」と「Improvement & Silviculture of
oaks」の部会の合同部会となります。
2003年9月28日〜10月2日に、茨城県つくば市で(独)森林総研が部会と共催のかたちで開催することになりました。
そこで、施業研究会のホームページをお借りして、この研究集会の宣伝をさせていただきます。
2.これまでの研究集会
ヨーロッパやアメリカではナラ類は重要な造林用樹種です。ヨーロッパとアメリカの産地系統を両大陸で交換して大規模な産地試験を行うなど、この部会が誕生する以前からこれらの国々の間には深い交流がありました。それを背景にIUFROの「P2.08.05 Genetics of Quercus」の部会は生まれたともいえます。このQuercusの遺伝部会では、1991年にフランスで第1回、その後1997年にアメリカで第2回の研究集会が開催されています。一方、ナラ類を対象とする造林部門の部会「S1.06.00 Improvement and silviculture of oaks」は別にヨーロッパを中心に活動をしていたようです。遺伝部門と造林部門との情報交換の必要性が二つの部会内で高まってきたことから、2000年のクロアチアにおいて、初めて合同で研究集会を開催しました。造林部門と遺伝部門の研究者が一堂に会するといっても、基本的には別のセッションで集会は進められ、本当に合同セッションを行うのはごく一部に過ぎなかったことは事実です。しかし、他分野とはいっても扱っている対象が共通のものであり、互いに深く関連し合う分野であることに変わりはありません。このため、他の部会の方との意見交換や情報交換は大変活発に、時には辛辣に行われ、意義のある集会となりました。
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余談ですが、クロアチアの低地地帯に広がるPedunculate oak( Quercus robur L. )と呼ばれるナラ林は、洋酒の樽材や建築用材として重要な資源です。この集会では、秋田杉の美林を思い起こすような(ちょっとオーバー?)立派なナラの林を見学できました。このことだけでもこの集会に参加した意義はあったと思っています。
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クロアチアでの集会の成功を受けて、次回の会議も同様に造林と遺伝の両部会合同として開催することが決められました。これまで集会が開催されていない地域であるアジアでの開催が検討された結果、日本に白羽の矢が立った訳です。そこで、これまで研究集会に毎回顔を出していた不詳金指あや子(森林総研)が日本側事務局担当となりました。これまでこの集会に関連のあった方に加え、集会の内容にふさわしい方に事務局参加をお願いして動き出したところです。エクスカーションでは鈴木和次郎さん、造林部門の窓口として大住克博さん、遺伝部門で生方正俊さんなど、施業研究会でもお馴染みの顔ぶれもスタッフに参加していただいています。大住さんのナラ類のセミナー紹介もこのような伏線があって始まったのだ…ということが、ここで皆様にもよくご理解いただけたことと思います(実は逆です!)。
3.OAK2003 JAPAN の内容
理想は高く、集会のテーマは「Integration of Silviculture and Genetics in Creating and Sustaining Oak Forests.」としています。招待講演者のV.I.P.として京都大学の菊沢喜八郎先生にお願いし、アジアのナラ類全体の位置づけについて講演していただくことになっています。海外からの招聘者は未定ですが、アジア地域で初の会合ということですので、アジア(韓国、中国)からの招聘を検討しているところです。
会議スケジュールは以下のとおりです。
・日程:2003年9月28(月)-10月2日(金)
9.28(月) am 受付・開会挨拶
全体会議 (招待講演、基調講演)
pm 全体会議
9.29(火) am 部門別セッション
pm ポスターセッション
9.30(水) am 部門別セッション
pm 部門別セッション
10.1(木) am 全体会議
pm エクスカーション出発(日光)
10.2(金) 終日
エクスカーション(日光・千手が原試験地、日光スギ並木&東照宮)
つくばへ または解散
なお、集会の会議場はつくば市内(「研究交流センター」または「つくば国際会議場」)で行うことは決まっていますが、助成金の確保が未定なため、どちらの会場でやるかはまだ決まっていません。参加経費は4万円です。少し高額に感じる方もおられるかもしれませんが、多くはエクスカーション経費ですので、ご理解下さい。
また、オプショナルツアーとして集会の後に北海道と関西地方でそれぞれエクスカーションを予定しています。
詳細については、専用ホームページ(http://www.ffpri.affrc.go.jp/symposium/oak2003j/ )をご覧下さい。
この集会は学会の大会とは異なり、人数も数十名程度とごく小規模な集まりですので、より緊密な研究交流をはかることができます。ナラ類を研究対象とされている方にとっては大変よい研究発表と情報交換の場となることと思います。関心のある皆様のご参加を心よりお待ちしています。どうぞよろしくお願いします。
編集後記
生まれ故郷の村に72年ぶりの大祭礼がやってくる。村の東西にある神社から数百人もの行列を繰り出し、海辺までの30数キロを行き来し、天下泰平、万民豊楽を願う祭事である。それにしても72年ごと、だれも経験したことがない祭事その他、伝承などで関係者はさぞかし準備が大変だろう(もっとも、よくしたもので7年ごとの小祭礼はあるのだが・・・)。ところで、時間がかかるといえば、わが林業業界。時代は長伐期施業を志向(?)で、いろいろな理屈を付けては、これを合理化・正当化しているが、本音のところは木材価格が低迷して切れないだけ。72年どころか120年―130年、だれがどのような目的で植栽し、どのように保育管理し、これまで至ったのか、後の人々には知りようがない。200年を過ぎたチョー(超)高齢級ヒノキ人工林を調査して、藩政時代に植栽されたヒノキが、幕藩体制の崩壊と共に、不法伐採の憂き目に会い、先の大戦で良質材が抜き切りされ、不良形質木を中心に残され、今日に至っているが分かった。たまに枯れるヒノキは、今も、地元業者によって、伐採利用されている(つまり枯れてもヒノキ)。御都合主義である。長伐期施業にも、縁起や伝統的な祭事が必要なのかもしれない。(狢)