木霊 (TARUSU)
森林施業研究会ニュ−ズ・レター 
No.21 2003.9.17.
Newsletter of the Forest Management and Research Network


今年は愛媛で荒修行!
森林施業研究会第6回現地検討会及び研修会(愛媛合宿)のお知らせ


例年、好評を博している森林施業研究会現地検討会(合宿)の季節が巡ってきました。今年は、愛媛県久万町での開催、日本の森林管理の変革を目指して現地見学、セミナー、果てしない討議が繰り広げられます。モノ皆珍しく、ヒト皆怪しげな現地検討会に臆することなく参加されんことを!実施要綱は次の通りです。

○日時:平成年11月4日(火)〜6日(木)
○テーマ:スギとヒノキの低コスト間伐と複層林施業、そしてヒノキ天然更新
○場所:
 ・宿泊とセミナー会場:久万高原ふるさと旅行村
〒791-1212 上浮穴郡久万町大字下畑野川乙488番地
TEL 0892-41-0711 FAX 0892-41-0840
http://www.town.kuma.ehime.jp/furusato/
 ・現地検討会:愛媛県越智郡玉川町竜岡上、上浮穴郡久万町下畑野川及び露峰
○主催:森林施業研究会(代表:渡邊定元)
○参加費:一泊二食×2+弁当(5日)+会場使用料等で 計15,000円
     (部分参加については、個別に相談してください。)
     (4日の昼食については、各自で済ました後に集合ください。)

○スケジュール
11月4日火曜日
13:30 JR松山駅集合
 14:30 国道317号線 水ヶ峠トンネル玉川町側駐車場集合
(車でしまなみ街道を渡って来られる方は、こちらでお願いします。)
 15:00 ヒノキ−ヒノキ複層林試験地 現地検討会(1.5時間を予定)
 16:30 宿泊地へ移動
 19:00 宿泊地「久万高原ふるさと旅行村」着
 ( 夕 食 )
 20:00 開会挨拶とセミナー(1時間を予定)
・ 愛媛県の複層林施業について 中岡圭一(愛媛県林業技術センター)
・ 複層林施業について 酒井 武(森林総合研究所四国支所)

11月5日水曜日
 ( 朝 食 )
  8:30 「久万高原ふるさと旅行村」発
  8:50 スギ−スギ複層林試験地 現地検討会(1時間を予定)
 ( 移 動 )
 11:00 ヒノキ天然更新試験地 現地検討会(1時間を予定)
 ( 途中移動と昼食[弁当] )
 13:00 ヒノキ群状択伐試験地 現地検討会(1.5時間を予定)
 14:30 宿泊地へ移動
 15:30 宿泊地「久万高原ふるさと旅行村」着
 16:00 セミナー
・ ヒノキ天然更新について 豊田信行(愛媛県林業技術センター)
・ 群状択伐試験について 谷山 徹(愛媛県林業技術センター)
・ マルチキャビテーションコンテナ苗育苗について 柚村誠二(愛媛県林業技術センター)
他 森林管理・林業技術に関する研究発表と討議(3題程度)夕食後につづく
 18:00 夕食
 19:00 セミナー & 懇親会

11月6日木曜日
 ( 朝食 )後 解散
・オプショナルとして、愛媛県林業技術センター内での、マルチキャビテーションコンテナ苗育苗及び現地植栽状況を見ることが出来ます。(所要時間1.5時間程度)

○ 注意事項など
◎ 集合場所から、見地検討会及び宿舎への移動は、参加される方と開催事務局が用意した普通自動車の分乗でお願いします。出来るなら、近県から参加される方は、車でのお越しを歓迎します。ただし、現地検討会会場は、林道の走行がありますので、車高の高いRV車などですと、なお大歓迎です。

◎ 現地検討会会場
1.愛媛県越智郡玉川町竜岡上 ヒノキ−ヒノキ複層林試験地
(今治市・玉川町及び朝倉村共有山組合所有林)
 2.愛媛県上浮穴郡久万町下畑野川 スギ−スギ複層林試験地
(久万町 岡 信一氏所有林)
 3.愛媛県上浮穴郡久万町露峰 ヒノキ天然更新試験地(久万町有林)
 4.愛媛県上浮穴郡久万町露峰 ヒノキ群状択伐試験地(久万町有林)

◎ 利用可能な公共交通機関のHP
JR四国(鉄道、高速バス):http://www.jr-shikoku.co.jp/
石崎汽船(広島−松山間フェリー&高速船):http://www.ishizakikisen.co.jp/
伊予鉄道(高速バス):http://www.iyotetsu.co.jp/index.html

◎ 都合によりスケジュールを変更する可能性があります。あらかじめご了承ください。

◎ 参加申し込みは、住所、所属、氏名、連絡先、参加交通手段(車でお越しなら、運転手を除いて何名乗車可能か?)、集合場所、オプショナル参加希望者はその旨を明記の上、次の担当者宛にe−mailもしくはFAXで、お願いします。
・ 問い合わせについても、同様に願います。
・ 締め切り日は、10月21日とさせていただきます。

「愛媛合宿」事務局
石川 実 いしかわ みのる
愛媛県林業技術センター
〒791-1205 愛媛県上浮穴郡久万町菅生280-38(かみうけなぐんくまちょうすごう)
TEL 0892-21-2266 FAX 0892-21-3068
e−mail:ishikawa-minoru@pref.ehime.jp

シンポジウム「自然林はよみがえるか−徳島県「千年の森」での取り組み−」のご案内

 以下のようなテーマでシンポジウムを開催いたします.愛媛での森林施業研究会の前に,皆様の御参加をお待ちしています.詳細は検討中ですので,決まり次第,お申込みいただいた方に詳細をお知らせいたします.現地を見学なさりたい方については,11月2日(11時頃,徳島市内を出発予定)にご案内したいと思います.
 なお,徳島から愛媛(松山)までは,高速バスで3時間ほどです.研究会前日の3日にシンポをしても17時30分徳島駅発の最終バスに乗っていただくと,20時40分に松山に着きます.翌日4日であれば,7時30分の始発で,10時40分に着きます.

●テーマ
 自然林はよみがえるか−徳島県「千年の森」での取り組み−

●趣旨
 自然林を再生させることは,今,大きな課題の一つとなっていて,各地で様々な取り組みがなされています.しかしながら,それらの中には地域の森林を反映するような樹種が利用されていなかったり,地域の自然林構成樹種であっても苗は地域外から持ち込まれ,
遺伝的な撹乱を引き起こす可能性をはらんでる植栽計画のもとで進められているものもあります.また,地域の活動でありながらも,地域住民の協力が得られないままに進められる事業も多くあるようです. そのような中,徳島県では「千年の森事業」の一環として,ブナ自然林が残存する高丸山周辺のスギ伐採跡地で自然林の復元事業を推進しています.今年の3月に開催された森林施業研究会でも紹介されたその事業は,事業地周辺に残存する自然林をモデルとして植栽樹種や植栽のゾーニング計画を策定した上で,周辺から地域住民が採取した種子を用いて地域住民が育苗し,県民のボランティアで植栽するという計画のもとで進められているものであり,日本の自然林回復事業の中でも先進的な事例として位置づけられるものであると思われます.加えて,地域では,その植栽事業を利用して地域の活性化を図ろうとする動きも育ちつつあります.
 本シンポジウムでは,この「高丸山千年の森事業」にかかわる,行政,地域住民,大学研究者,民間の街づくりコンサルタント等の関係者から,それぞれのかかわり方を披露していただき,そうした考え方に基づく事業の進め方の利点,難しさ等について掘り下げてみたいと思います.

●主催
徳島県林業振興課・徳島保全生物学研究会
●日時
平成15年11月3日(月)13時〜
●場所
  徳島大学工学部 (予定)
●プログラム
13:00〜13:10  趣旨説明等
13:10〜13:30  千年の森づくりの取り組み
        (早田健治:徳島農林事務所)
13:30〜14:00  自然林を蘇らせるためのプラン
        (鎌田磨人:徳島大学工学部)
14:00〜14:20  千年の森づくりと地域の夢
        (田中貴代:広葉樹苗木生産組合)
 休憩
14:30〜15:00  千年の森づくりを通した地域活性化
        (澤田俊明:環境とまちづくり)
15:00〜15:30  日本の自然林再生事業の中の「千年の森」の位置付け
        (鈴木和次郎:森林総合研究所)
15:30〜16:30 質疑応答・全体討議
16:40      閉会

===================参加申込フォーム====================

鎌田磨人 宛て
徳島大学工学部建設工学科環境保全工学研究室
 TEL & FAX 088-656-9134
  Email kamada@ce.tokushima-u.ac.jp

お名前:
所 属:
email :
電 話:

11月2日(日) 現地エクスカーション 参加・不参加
11月3日(月) シンポジウム     参加・不参加

エクスカーションは11頃徳島市内を出発し,18時頃に戻って
くる予定です.詳細はおってご連絡いたします.


千年の森整備に携わって
               徳島県徳島農林事務所 早田健治
千年の森は、徳島県が、これからの森林の有るべき姿を県民とともに考えていく拠点とするため、徳島県中央部の名山「高丸山」の周辺約116haの森林を対象に整備を進めている実験実習展示林です。
その大きな特徴は、事業自体が、非常にオープンなかたちで推進されている点にあります。事業はまず、平成9年度に県内外の有識者で構成される基本構想策定委員会による基本構想の策定に始まり、
1いつの時代にも対応できる森
2人と森との共生のシンボルとなる森
3県民の誇りやシンボルになる森
という、千年の森のコンセプトが策定されました。平成10年度には、続いて地域選定委員会により、県内数カ所の候補地の中から勝浦郡上勝町の高丸山周辺が整備地区に選定され、さらに、平成11年度には、地元関係者や森林ボランティア、等も含めた整備基本計画検討委員会が組織され、千年の森の整備や利用に関する基本計画が策定されました。
これらの、一連の計画・構想の内容には、地元関係者、森林ボランティア、学識経験者等の様々な意見や意向が幅広く取り入れられており、新しい時代に向けての森林のあり方や、利用について、自由な形で意見が取り交わされた結果だと考えています。
また、平行して、埋土種子や、種子の飛散状況等の調査も含めた、詳細な植生調査が実施され、基本計画策定の重要な根拠になっています。
私は、この千年の森に平成13年度から関わることになりました。最初は、今までの事業とまったく違った手法にとまどうこともありましたが、構想策定委員経験者や地元関係者、連携して協力を行っていた森林ボランティアなど、千年の森に想いを寄せるたくさんの人々に出会い、徐々にこの事業に惹かれるようになりました。
千年の森の区域は、ブナ天然林25haからなる保全ゾーン、40年生のスギ・ヒノキ人工林14ha、伐採跡地17ha、残土処理場跡地1ha、計32haからなる育成ゾーン、および隣接して、千年の森に協調して森林整備を行う協力林ゾーン60haで構成され、保全ゾーンは特に手を入れず今後ともブナ林の保全を図っていくほか、残土処理場部分で実習舎等の活動拠点整備を行い、それを除く31haの育成ゾーンで31世紀へ向けた森林整備を進めていくことになっており、特に、7年前にスギ・ヒノキ動輪地を皆伐した伐採跡地17haが、広葉樹林の再生を軸とした整備の中心になっています。
この伐採跡地部分は、県が直接植栽・管理を行う自然林育成区と森林に関心を持つ学校、サークル、NPO等の団体に0.1ha程度に区画を分割してボランティアにより植栽・管理を行ってもらう、森林育成体験区に分かれており、自然林育成区の一部については、現状のまま放置し、遷移を観察する自然遷移観察区を設け、その他の部分については、植栽を中心に森林整備を進める計画です。
整備の目標は、保全ゾーンのブナ林の再生におき、植栽は、植生調査に基づき次のように谷、谷壁、斜面、尾根の4つの地形毎に優占する樹種群を選定し、ha当たり、主要樹種3000本副樹種1500本、計4500本で行っています。

地形 区分 樹種名
主要樹種
尾根 モミ・ツガ
斜面 ブナ・ミズメ
谷壁 イタヤ・コハウチワカエデ・シナノキ・シデ・ミズメ
ホオノキ・カツラ・トチノキ・ケヤキ・イタヤカエデ
その他樹種
尾根 アズキナシ・ミズメ・ヒメシャラ
斜面 ヒメシャラ・ヤマザクラ・キハダ・ハリギリ
谷壁 ケヤキ・ヒナウチワカエデ・オオモミジ・ヤマボウシ・ヒメシャラ
チドリノキ・ヒナウチワカエデ・コワウチワカエデ・サワシバ

 事業的規模で行っているため、樹種の配列については、できるだけ混合させることを指示しただけで、規則性はもっていません。現実には、苗木の搬入等の問題もあり、同一樹種がまとまっている部分もみられるようです。ただし、植栽密度が、4500本/haとかなり多いので、閉鎖の後は、適当な種間淘汰が行われるものと考えています。なお、平成15年春には、第1次造林として3.8ha(17100本)の植栽が実施され順調に生育しています。また、下刈り時の誤伐を防止するためにスギバークによるマルチングを行っています。1本当たり2kgのバークを根元地際に散布していますが、案外、視認性もよく、防草効果もあるため、今後は、廃棄処理が課題となっている製材バークの処理策としても検討を加えたいと思っています。
 千年の森では、基本構想の中で、遺伝子保全の見地から、他地域産の種子、苗木等の導入を制限しています。このため、区域内で利用する苗木等については、どうしても、自給していく必要があります。幸い、この点については、地元の熱心な関係者の協力により、上勝町内の母樹からの苗木生産システムがほぼ完成し、林家7名で組織する上勝広葉樹苗木生産組合(林業研究グループ)が、イタヤカエデ、ミズメ、ケヤキ等23樹種について、20000本/年程度の生産能力を持つに至っております。広葉樹は、樹種により種子の豊凶が激しく、種子の貯蔵システムの確立による、安定供給体制の確立が課題となっています。また、一部については、森林総研の指導により、マルチキャビティイコンテナによる育苗を行っており、成績も良く、掘り取り、出荷等の作業性も高いため、現在、大半が県外産苗を使用している、公共事業への利用を模索しており、実現すれば、林家の新たな安定的収入源として期待されています。
 また、施業を必要とする人工林部分及び、伐採跡地部分には、幅員1.5mの簡易作業道3417m、幅員2mの基幹作業道712m、計4129mが開設されており、道路密度は、ha当たり133mに達し、将来の木材生産と調査等を含めた森林管理に対応しています。この外にも幅員1m程度の作業歩道が3000m程度開設される予定で、森林へのアプローチには十分留意しています。森と人がつながるためには、どうしても必要な施設ではないでしょうか?なお、この作業道には、間伐材を利用したV型横断側溝をほぼ10mおきに設置しており、これにより、作業道は、日降水量500mm程度の集中豪雨でもほとんど、路面の流亡などがみられません。千年の森オリジナルの自信作ですので、見学の折りには是非ご覧ください。なお、この横断側溝の詳細については、林業新知識誌2002年12月号に紹介してありますので興味のある方はご覧ください。
 千年の森は、まだ始まったばかりの壮大な実験であり、試行錯誤の繰り返しの中で、悪戦苦闘の毎日です。また、その性格から、多くの人々の参加や協力により、参加者自身で作り上げていく森林です。森林に関心を持つできるだけ多くの方々の参加を得ながら、未来に通じる豊かな森林に育っていくことを祈っています。


カツラのコンテナ苗


バークマルチ(バークを使ったマルチング)

植栽

 第2回ナラ林研究会(コナラ属セミナー)報告

                   鳥取大学農学部・演習林 佐野淳之

 第2回ナラ林研究会(シノニム:コナラ属セミナー、ナラ振興会)が森林総合研究所関西支所(京都)で2002年12月19日に行われました。第2回目は、鳥取大学農学部の森林生態系管理学研究室に所属する佐野淳之(助教授)と田中哲弥(M1)が話題提供しました。それぞれの発表タイトルは以下の通りです。

佐野淳之:ロシア沿海地方のモンゴリナラ林
田中哲弥:蒜山地域における人為的撹乱後の落葉性広葉樹二次林の動態
     −げっ歯類の嗜好性がコナラ属の更新に与える影響−

ロシア沿海地方のモンゴリナラ林
Quercus mongolica forests in Primorye of the Russian far east.

佐野淳之 jsano@muses.tottori-u.ac.jp
鳥取大学農学部・演習林:森林生態系管理学研究室
Forest Ecology and Ecosystem Management Lab., Tottori University Forests
http://muses.muses.tottori-u.ac.jp/dept/Forest/ForEcol-J.html

要 旨

 2000年と2002年に、ロシア科学アカデミー極東支部土壌生物学研究所のご協力の下、専修大学北海道短期大学の石川幸男教授らとロシア沿海地方のモンゴリナラ林を調査する機会を得た(石川ら2001)。ここでは、2002年の写真を中心にモンゴリナラ林調査の概要を説明する。
 Abrams (1992)によると、ナラ林の成立は山火事と関係があると言われており、鳥取大学蒜山演習林でも、火入れを受けていないサイトでは多くの樹種が優占を分けあっているが、火入れを受けたサイトではコナラが圧倒的に優占する現象が見られる。そのようなサイトでは種多様性が低く(佐野・大塚1998、Sano 2000)、萌芽率も高かった(佐野1998)。2001年に調査した中国遼寧省のモンゴリナラ林も(山中2002)、今回調査したロシア沿海地方のモンゴリナラ林も、必ず火の入った場所に成立しており、萌芽率も高かった。従って、Abrams (1992)のFire-Oak Hypothesisは、北半球の温帯に成立するナラ林に汎用されると考えられる。ただし、同じナラ属(Quercus)であっても、コナラ(Q. serrata)、カシワ(Q. dentata)、ミズナラ(Q. crispulaあるいはQ. mongolica var. grosseserrata)、モンゴリナラ(Q. mongolica)など、種によって生態的特性がやや異なることが予想されるので、これらの種の比較研究が必要である。
 今回の話題提供にあたりお世話頂いた大住克博さんと鳥取から車を運転してくれていろいろ論議して頂いた鳥取大学乾燥地研究センターの山中典和さんに感謝します。

参考文献
Abrams, M. D. (1992) Fire and the development of oak forests. BioScience, 42: 346-353.
Dobrynin, A. P. (2000) The Oak Forests of the Russian Far East. Proceedings of the Botanical Gardens of the Far Eastern Branch of the Russian Academy of Sciences. Vol. 3, Ed. Nedoluzhko, V. A. 259 pp. Russian Academy of Sciences, Far Eastern Branch, Dalnauka, Vladivostok, Russia.
Fujita, K. and Sano, J. (2000) Structure and developmental process of a Quercus mongolica var. grosseserrata forest in Fagetea crenatae region in Japan. Canadian Journal of Forest Research, 30: 1877-1885.
Ishikawa, Y., Krestov, P. V. and Namikawa, K. (1999) Disturbance history and tree establishment in old-growth Pinus koraiensis-hardwood forests in the Russian Far East. Journal of Vegetation Science, 10: 439-448.
石川 幸男・沖津 進・並川 寛司・佐野 淳之・吉川 正人・P. クレストフ・S. グリシン(2001)ロシア沿海地方中部におけるハルニレ河畔林の成立と発達. 日本生態学会講演要旨集, 48: 219.
沖津進(2002)北方植生の生態学. 212 pp. 古今書院, 東京
佐野淳之 (1998) 二次林の景観と構造に与える撹乱履歴の影響. 国際景観生態学会日本支部会報, 4: 41-42.
Sano, J. (2000) Species diversity and stand structure of secondary forests after different disturbance events. Abstracts of Group Sessions, 8.07.00 Biodiversity, XXI IUFRO World Congress, Kuala Lumpur, Malaysia: 351-352.
佐野淳之・大塚次郎 (1998) 鳥取大学蒜山演習林における落葉性広葉樹二次林の樹種構成と種多様性−撹乱履歴の異なる2つのサイトの比較−. 鳥取大学農学部演習林研究報告, 25, 1-10.
山中典和(2002)中国東部における乾燥傾度と植生変化に関する研究. 日本生命財団研究成果報告書, 151 pp.

参考HP
http://www.fegi.ru/prim/plant/les8.htm(Oak forests in Primorye)
http://kyoshoku.coop.nagoya-u.ac.jp/kakehashi/FN/63.html(モンゴリナラの謎)
http://www.foejapan.org/siberia/issue/13.html(タイガプロジェクト)
http://www.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/CD-RDB/www/CD1.html(海上の森の注目すべき植物種)


ロシア沿海地方の概要
<面積> 166,965 km2 <人口> 2,194,000 ※1998年末現在 <地勢> ロシア連邦の南東部に位置し、北はハバロフスク地方、西及び南西は中国から北朝鮮に接し、東及び南は日本海に面している。シハテ・アリン山脈(最高2,077m)の南半分が州の大半を占め、森林が全土の70%に及ぶ。西部はプリハンカイスキー低地に占められ、中国との国境となっているウスリー川が北上してアムール川に至る。<気候> モンスーン型気候であり、冬は内陸の影響を受け気温が低く乾燥して晴天の日が続き、夏は海洋の影響を受けて高温多湿な空気が浸入し曇った日が続く。ウラジオストク市の1月の平均気温は-13℃、7月の平均気温は17℃、年間降水量は828mm。


ロシア沿海地方(ビギン川流域、アルム川流域、パルティザンスク周辺)の調査
2002.8.25-9.5

      

(左から)ロシア沿海地方の地図      元軍用トラックで移動       最初の調査地


      
(左から)日本海沿岸のハマナシ     モンゴリナラの稚樹        保護区内の宿泊施設


      
(左から)モンゴリナラ二次林        根元に山火事跡         火事とシカの影響


      
(左から)モンゴリナラの葉          ロシアの文献(カシワ、モンゴリナラ、ミズナラ)



コナラ属研究会                    2002.12.19

                     鳥取大学農学部森林生態系管理学M1 田中哲弥

蒜山地域における人為的撹乱後の落葉性広葉樹二次林の動態
ーげっ歯類の嗜好性がコナラ属の更新に与える影響‐

ナラ属の種子は堅果であり、その散布様式は重力散布と、動物散布に分けられる。動物散布にかかわる動物としてはネズミ、リス、カケスなどが挙げられる。その種子散布者に嗜好性があり、選択的に特定の種の堅果を運搬、散布しているとすると、コナラ属の更新に大きな影響を与える。今回は、散布に特に関与の高いと言われているネズミに注目し、その嗜好性を検証した。 


 調査地は岡山県真庭郡川上村の村有地の標高560~610 mの斜面で、毎春に火入れが行われている「火入れ地」と火入れ地に隣接し12年前に火入れが終了した「火入れ跡地」にそれぞれ50 m?50 mのプロットを設置した。

 火入れ地の出現樹種はカシワ、クリの二種であり、またカシワが圧倒的に優占していた。それに対し、火入れ跡地では出現樹種も9種に増え、主な優占樹種として、以前から存在していたカシワ、クリに加えて、コナラが存在した。

、試験地よりシャーマントラップで捕獲したネズミを用いた。2日おきにコナラ、ミズナラ、カシワの堅果をそれぞれ10個ずつ与え、食べた量を調べた。ヒメネズミ、アカネズミともにコナラ、カシワ、ミズナラの順に好んで食べることが明らかになった。

 また、ネズミの全摂食量に対する各樹種の割合でみると、アカネズミに関してミズナラ堅果も比較的摂食していることがわかった。これはヒメネズミに比べ、アカネズミの体が大きいので、比較的大きな堅果であるミズナラを扱いやすかったことが考えられる。また、2日に1回のペースだと、アカネズミに対して好みのコナラ堅果の量が十分でなかったことが考えられる。事実、ミズナラ堅果が多く摂食されていたときには、コナラ堅果は残りわずかか、残っていなかった。今後は嗜好性を決定する要因として、樹種、形状、大きさ、タンニン量のどれが大きく影響を及ぼすのかについても明らかにしていきたい。

〈議論〉
・嗜好性を見るための実験で、試験地にないミズナラでなく、クリを与えてみたほうがいいのでは。
・コナラが本当に実生で侵入してきたのかどうかの確認が必要。
・飼育での嗜好性ではなく、野外での持ち去り実験のほうが現実的なのでは。
・ネズミが堅果を食べる時期にあわせて実験を行うことが大事。


編集後記
「森林ボランテアがブナ林の下刈りをしているが、どう思いますか?」と聞かれ、きょとんとしてしまった。聞けば、あるNPO法人が全国から森林ボランテアを集め、ブナ林(二次林)の下刈り(ササ植生の刈り払い)を行っているという。ブナ林の育成に手を貸せるというので、参加者に人気が高いのだというが、二時間程度の作業で、後は地元との官製交流会。あまり目くじらを立てることでもないが、ブナ林の育成に役立つかどうかと聞かれれば、答えに窮する。また、別の話。天然記念物に指定されている湿原周辺の放棄農耕地に自然林(ブナ林)を再生させようと、ボランテアを募り、山引き苗の植栽を大々的に行おうというイベントが計画されていると言う。「あんな所にブナの苗木を植えても枯れてしまうに決まっている」と地元の事情通(私もそう思う)。そんなイベントに動員されるその日限りのボランテアとはいったい何なのかと考え込んでしまう。山仕事のプロは、ボランテアに冷ややかだ!一方で市民の森林に対する思いは、意外と熱い。この間に立つ人間に不純を感じることがある(狢)。


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