木霊 (TARUSU)
森林施業研究会ニュ−ズ・レター  No.41 2008.05.09
Newsletter of the Forest Management and Research Network


やっぱり埋められなかった「計画」と「施業」のギャップ

合同シンポジウム
(写真1:120名ほどが参加した合同シンポジウム)


森林施業研究会・森林計画学会合同シンポジウム(「計画と施業を結ぶ」)報告

小山泰弘(長野県林業総合センター)

 森林の計画と施業は、表裏の関係であるべきなのに、現実には、大きなギャップがあると考えられている。これは何とかしなければならないのではということで、2007年春に九州で開催された森林施業研究会の総会の席で、森林計画学会の関係者との協議が始まり、今回の合同シンポジウムの開催と相成った。
今回の合同シンポジウムでは、本来あるべき姿といえる「施業と計画の一体化には何が必要なのか?」を考えるため、森林計画学会側は、計画制度をどう具体的個別的な森林施業に結び付けていくかという発表者3名が揃い、一方森林施業研究会側は、計画制度を施業に降ろすときにどのような問題があるかを提起する3名が並んだ。
シンポジウムでは、計画学会・施業研究会がほぼ交互に発表する形式となり、発表者の立場も国家レベル、地方行政レベル、現場レベルといわば、3段階の話題が交互に並ぶ形となった。
今回は、それぞれのレベルごとに整理して報告する。

第一幕 地方行政レベル(森林計画編成の立場)から
 第一幕として登場したのは、地域森林計画に詳しい松村直人氏(三重大学)と、市町村森林整備計画を担当している藤掛雅洋氏(岐阜県郡上市役所)。
松村氏は、「森林計画と施業の実践」と題し、森林計画は「森林の持つ多様な機能を保続する」ために重要であると位置づけた。今日言われている「持続可能な森林経営」を進めるためには、計画を立てるだけではなく、実行後にその成果を検証し、次の計画に活かしていくことが重要であるとした。いずれにせよ計画策定の上で最も重要なことが、森林資源の正確な把握であり、日本の森林計画の基礎とも言えるドイツの森林計画事例として、ニーダーザクセン州の計画が紹介され、資源調査に力を入れていることが紹介された。また、日本の地域森林計画としては三重県の例を紹介された。
 一方、市町村森林整備計画の編成担当者である藤掛氏は、「林業の現場における森林計画(林学と林業のあいだにあるもの)について」として、市町村森林整備計画を編成する上での苦悩を語った。特に、森林計画の中で最も重要なゾーニングは本来、対象森林の調査を行い、それぞれの地域に合った細かいモザイクとして表現すべきものであるが、現実は大きく異なっていると切り出した。市町村森林整備計画において行うゾーニングは、ただの色塗りではなく、ゾーニングに「事業」という名の補助制度がぶら下がっている。このため、計画を編成する際に、その地域をどのような森林にしていくか?という理念に基づいてゾーニングをすることはなく、より効率的な「事業」を見据えながら、自分たちの負担が出来るだけ少なく、かつ上部組織からの注文に対応できるような配慮をしたゾーニングを行う傾向があるとの現状を述べた。

第二幕 現場からの切実な声
 第一幕では、実際の計画を編成する関係者からの意見が提示されたが、第二幕では森林現場に近い立場として近藤洋史氏(森林総研九州)と、香山由人氏(山仕事創造舎)が登壇した。
近藤氏は、「森林組合の現場におけるGISの活用の実態について」として、森林計画を定める上で、正確な情報を把握する事が最も重要であり、現地調査無くしては計画の実行は不可能であると現地調査の重要性を強調した。一方、林齢が高くなるとともに、森林所有者も高齢化しており、森林の現況や境界が不明瞭になってきている。森林の基本的な情報はこれまで所有者が把握している場合が多かったが、すでに不明瞭となっており、現地情報の正確な把握が不可欠である。森林組合は、現地情報を把握する母体として重要な組織であり、GISやGPSなどの最新ツールを用いて、現地の位置情報や林木の情報を正確かつ確実に保存しておくことが、森林組合の将来を考えると最も重要なことではないかと訴えた。さらに、こうした正確な情報が市町村森林整備計画や地域森林計画などの上位の計画へ受け渡せる仕組みを構築することで、現実性の高い森林計画が策定できるのではないかと提案した。
 一方の香山氏は、民有林の管理委託を請け負っている山林事業体の立場から、「民有林管理・経営の立場から見た森林計画制度について」として、現場の声を述べた。香山氏らが森林施業を請け負う場合は、現地を調査したのちに採算性や所有者の意向、地域の情勢などを踏まえて、独自の施業計画を策定し将来に向けた施業の提案を行っている。香山氏らは、山林の経営受託をめざしており、その手段として自分たちの独自計画書は不可欠であると考えている。本来であれば山林管理に伴って発生した材を搬出することで、収益を得ることが理想であり、施業収益だけで生活できる山づくりを進めていきたいが、現実には難しく、採算割れを起こさないために、可能な限り補助事業を取り入れて、所有者の負担軽減を進めている。こうしたことから、現状の森林管理では、市町村森林整備計画に合わせて、現実とは多少異なるような対応を行ってしまう場合もあり、ある種の二重手間となっている現状を紹介されていた。

第三幕 国の目線で
 昼食を挟んだ午後は、これまでの報告に続き、最も大きな単位である国レベルでの話題提供として、職員として国有林の経営計画にも関わってこられた田米開隆男氏(関東森林管理局)と、全国森林計画制度に最も詳しい白石則彦氏(東京大学)の両氏のお話しがあった。
 今回の発表はあくまで個人的な意見であると前置きをしながら田米開氏は、国民の共通財産である国有林の経営計画は、本当に国民に役立っているのか?との疑問を発した。氏は、「多面的機能の維持増進」といった、聞こえが良いが曖昧な言葉を計画書に多く記載することで、具体的な施業が見えにくくなっていると述べた。その結果、「技術に裏打ちされていない魂の抜けた計画制度」になっているのではないかと指摘した。さらに計画をよりよいものとしていくためには、自然保護団体など関心がある外部の人々との意見交換を積極的に行って、自分たちの計画が国民に理解してもらえるものであるのかを検証し、改善する努力が必要であると提案した。
 一方、白石氏は「森林計画と森林施業の変遷とその展望」と題し、全国森林計画制度の変遷を紹介した。そもそも森林計画制度は、人工林で木材が高く売れた時代に乱伐を抑制するために考えられたもので、計画を推進するための施策として事業が存在し、それぞれの事業に基づいた森林施業を行うように連動させていると説明した。計画と事業、施業が連動することで、林業振興を図りつつ森林の持つ多面的機能を失わないように配慮されていた。しかし、木材価格の低迷により林業の採算性が大きく低下したことで、両立が難しくなっていると指摘した。さらに現在の計画制度の問題点として、主伐に対しては事業によるコントロールが出来ないため、主伐が今後増えていくと森林資源管理の面でも問題になると指摘した。

今回のシンポジウムを通じて
 森林施業と森林計画は乖離しているのか?乖離しているとしたら、どのように繋げばよいのかという命題に対し、森林計画制度が現状では補助金という名の事業で縛られる中でかろうじて存在しており、事業と言う「縛り」が失われた瞬間に、計画制度自体が崩れ去るのではという危惧を感じた。
 現実には難しいことは承知しているが、森林の計画は本来、長期的なビジョンに沿ってそれぞれの地域でめざす目標林型が存在し、それに対して現状森林がどこまで達成出来ているのかを検証した上で、必要な施策を講じていくのが計画と施業の連動ではないかと思われる。
 このように考えると、白石氏が指摘した「主伐に対して、事業でコントロール出来ないから計画制度に問題がある」ということは、現行の森林計画制度が長期的な視点を持った計画ではなく、事業執行のための計画であると断言したように感じた。これは藤掛氏が指摘した「より効率よい事業を採択するための計画編成」という実情に対して、森林計画に携わる関係者からは、批判が出てくるのではないかと思われたが、フロアからはこうした指摘が無かったことから見ても、森林計画制度が補助事業にぶら下がっている制度であることを容認してしまった結果になったのではないかと思われる。
長野県でも地域森林計画及び市町村森林整備計画を編成する際に、現場サイドからは、「どの事業メニューが導入できるのか」を考える行政マンが多いことは理解しており、今回の発表はある意味で現状を正直に把握した結果と言うことも出来る。
しかし、「計画と施業を結ぶ」というタイトルに対して、「計画と事業が結ばれ、事業にぶら下がった施業が計画と結ばれている」という現状理解で終わってしまったことは、残念でならない。

話題提供者からの問題提起・主張
(写真2:話題提供者からの問題提起、そして主張)


*参加者の総括・意見・感想*


森林に対する正しい価値判断は全ての出発点

田米開 隆男(関東森林管理局)

 今回は、たいへん良い機会を与えられたと感謝している。
 昨今、国有林の管理経営に対する疑問や批判が後を絶たず、林野庁には任せられないとの強い意見も出されている。このような林野庁に対する根強い不信感はどこから来るのだろうか?それは、森林に対する価値判断の違いではなかろうか。我々林野技官はこの点で誤りのない判断をしているのだろうか。森林に対する正しい価値判断は全ての出発点であり、これなくしては、どれほど立派に見える経営計画であっても蜃気楼のごとく意味のないものになる。
 今回は、危機感をもって問題提起させてもらった。会場では、私の話に対して概ね肯定的な反応をいただいたと勝手に理解しているが、中には、異論のある方もおられよう。こういう方々とは、今後、大いに論議したい。論議こそ活性化の源ですから。私の話をきっかけにして、全国の森林管理局の計画担当者が自問自答しつつ研鑽を積むことを期待している。

森林組合の現場におけるGISの活用の実態について

近藤 洋史(森林総合研究所九州支所)

 平成19年度版森林・林業白書では、森林所有者の不在村化や高齢化、森林に対する国民のニーズが多様化する中、地域にある森林の現状を把握している森林組合への期待が大きくなっていると述べられている。現在、施業集約化や木材供給情報の集積による安定的な供給体制の確保に向けて、いくつかの森林組合で、GISなどの導入を図るとともに、その利用・活用が行われつつある。さらに、GPSのような新しい技術を活用している森林組合もある。今回のシンポジウムでは、森林組合におけるGISなどの利用・活用の実態についての事例を把握するとともに、その利活用における問題点を検討した。
 今回、調査対象とした森林組合は、全国森林組合連合会が主催した「平成19年度施業集約化・供給情報集積事業中核組合等中央研修」に参加した森林組合のうち、地域森林管理に対してGIS及びGPSを導入し、活用している組合とした。これらの森林組合においてGIS・GPSを担当している職員に対して聞き取り調査を行った。
 調査を行った森林組合のほとんどで、現在、問題となっているのは、森林区画の境界が不明確であるということであった。森林資源では高齢級化が進みつつあるが、山村では、そこに住んでいる人の高齢化が進んでいる。森林区画の境界を知っている人が、病気などで森林に行けない、逝去してしまったといった問題が生じている。さらに、境界を示すために植林していた境界木など現地の物証は台風などの災害、林内環境の変化などで損失している事例なども出ている。森林区画の情報は、山村とともに葬られる危機に直面している。そこで、今回調査を行ったほとんどの森林組合では、GPSを用いて、自らの手で森林区画の境界調査を行い、GISを用いてその区画情報の管理をおこなっていた。
 森林組合におけるGPS・GISのその他の利用事例として、林内路網情報の収集・管理、施業コストのシミュレーションなどもあった。
 森林情報と呼ばれるものは、森林簿を中心とした森林の現況をとりまとめた情報と、森林計画図のような森林区画の位置を示した図面の情報であると考えられる。森林情報の中心になるものは、現在、森林簿と森林計画図であると思われる。これらは、都道府県知事が策定する地域森林計画のための情報である。しかし、実際、森林簿と森林計画図とに記載されているそれぞれの情報の不突合の存在など、その精度・正確さについての問題が指摘されている。このような森林簿・森林計画図などの資料であるが、森林所有者等から森林施業計画作成に必要な資料について援助の申請があった場合には、都道府県知事及び市町村の長は、森林簿、森林計画図、その他の計画策定に必要な資料を提供することと規定されている。
森林組合など、森林施業計画を策定している事業体などでは、GPSやGISなどをツールとして利用・活用することで森林情報を整備しようとしている。しかし、現在、森林組合などの現場の最先端で整備された情報を、都道府県の管理している森林簿や森林計画図といった森林情報に反映できるようなシステムや制度などは規定されていないと思われる。
 鈴木太七は、著書「森林経理学」の中で「森林経理において、最初になさねばならない仕事は、林地の測量によって、その土地を確定し、それを正しく図に描くことである」と述べている。現在、森林組合などの現場で行っている森林情報の整備は、鈴木が示している「最初の仕事」であると考えられる。現場での測量などによって整備された情報を、現状の森林簿・森林計画図等で利用するにはいろいろな問題が介在すると思われる。しかし、現場で実際に調査された情報を反映することで、森林簿などの森林情報の精度・正確さをこれまで以上に高めることができると思われる。現場で調査・整備された森林情報は、我が国の森林情報整備の一端を担うものとして、地域森林計画などの上位計画に反映されるようなシステム化・制度化が行われるのを期待したい。

熱い魂をとりもどせ!

M.O(国有林職員)

 議論全体を聞いていて思う事は技術の崩壊によって,計画する側も実行する側も将来の明確なビジョンを持つことが出来ずに,その行く先を見失っている。たとえば水源涵養機能が高い森林の造成と言っても,そもそもどうやって施業するものなんだろうか? 人工林を間伐するだけで本当に水源涵養機能の高い森林が造成できるのか? 木材生産をする間伐とどう違うのか? 現場ではかなりの混乱・混同が見られる。しかし,この混乱は現場で全て解決すべき問題なのか? そもそも計画は今後,日本の森林がどのように管理されていくべきか,方向性を示しているのであろうか? その思い,願い,思想はあるのか? それらが欠落しているが故,混乱が生じているのではないだろうか?
 森林を作るのには長い年月がかかる。だからこそ時代が移り変わっても,その変遷に耐え,変わらないものを計画し目指さなければならない。しかし,今の日本の森林林業の置かれた事態を脱するために,明快な答えは用意されておらず,その時々のご都合でコロコロと目指すものが変わるものに対して,私には残念ながら『どうしていきたいのか?』その思いは伝わってこない。
 明治期に作成された国有林の経営(施業)計画を読んだ事がある。全体を通して,山に対する深い愛情と,山の恩恵を享受する地域住民に対する細かい心遣いを感じられた。そのような熱い魂が今の林業技術者や研究者から発せられていない。(このwebを見ている人は熱い魂を持っているのだろうが,なにせ絶対数が少ない・・・と思う)
 いずれにしろ,林業界全体の将来ビジョンそして思想の欠落は,21世紀の日本の森林林業に深刻な事態を及ぼすだろう。「アンタが悪い!」と罵りあうのは簡単であるが,この深刻な負のスパイラルから乗り切ってく力が発揮される事が,今の技術者・研究者に求められているのではないだろうか?

日ごろ現場で危惧している点を指摘されて大いに参考!

池田 伸(関東森林管理局森林技術センター)

 今回の施業研究会と森林計画学会の合同のシンポジウムには興味を持っていました。前日から東京農工大に参加することはできないので、茨城の田舎から何年ぶりかに5時20分の始発で東京に向かいました。今回の興味は、森林計画と施業にズレがあるのではないか、実際に現場では森林計画をどう認識しているのか、県や民間の林業家の人たちは森林計画をどう見ているのかなど国有林の職員にとっては未知の分野です。直接実践している方々の講演を聴き納得する部分も多くありました。残念なのは、既に森林計画と補助金が一体のものとしており、林業経営と補助金とは切り離せない状態になっていることが議論されていたことです。悲しいかな森林計画から離れたような気がしてなりません。また、林業の現場でどんな施業が行われているのか、森林の多面的機能は、持続可能な森林経営は、など現在の林業の現場と森林をキチッと検証する必要があるのではないかということも感じました。
 そういうなかで、国有林の実態など報告しながら講演された関東森林管理局の田米開さんの内容には同じ職場のせいもありますが大いにうなずく点も多く、日ごろ現場で危惧している点を指摘されて大いに参考になりました。今日の国有林が数値だけが先行し、計画に関しては現場段階での自主性がなくなってきていることには思わずうなずいてしまいました。改めて補助金を抜きには考えられない林業経営の厳しさと、そういう中での森林計画の重要性と、国有林の実態ということを再認識したシンポジウムでした。

総合討論で演台に立つ各話題提供者
(写真3:総合討論で演台に立つ各話題提供者)

 

林業振興と森林整備が予定調和しない時代の森林計画制度に何が求められるのか?

白石 則彦(東京大学大学院農学生命科学研究科)

 先の合同シンポジウムでは,主に森林計画制度の過去から今までの歴史的視点から話題提供させていただきました。貴重な機会を頂戴し誠にありがとうございました。
 我が国の森林計画制度は戦後間もない時期に創設され,国土の保全や資源の造成に大きな役割を果たしてきました。1,000万haの人工林資源は土地や労働力,苗の供給体制や林業の経済性などの恵まれた条件が重なって達成されたものです。この間,林業を取り巻く状況は常に変化を続けており,最初の10年間は主に荒廃地の復旧,その後20年間は林業の量的拡大,そしてそれ以降は森林の質的整備と公益的機能の発揮に重点を移してきました。森林計画制度も当初の規制的性質から次第に助長的・誘導的性質へと変わってきました。最近では林業の採算性がさらに低下し,大半の立地条件で林業の利回りは赤字に転じたと言われています。つまり現在は,林業振興と森林整備が予定調和しない時代であるといえます。
 森林計画制度は,平成13年の森林・林業基本法の制定を機に,公益的機能の発揮を主目的とする森林整備に軸足を移しました。シンポジウムでも話題になりましたが,循環利用林と水土保全林は,森林の様子は類似していますが,政策的な色付けは異なるものがあります。助成のあり方も前者は循環させるため,後者はむしろ伐らずに残すための方向付けがなされていくものと推察されます。
 最近の森林・林業を取り巻く新たな動きとしては,利害関係者としての県民の台頭が上げられます。従来は補助金による間伐事業といったことに関わるのは森林所有者と行政,そして森林組合くらいでしたが,最近ではここに森林の多面的機能の受益者として県民が加わってきていると考えています。県民はまた納税者でもあり,適正な公共事業投資へ監視の目を光らせます。限りある原資の中で効率的な森林整備が求められます。
 近年の趨勢として自然力を活用した森林施業が打ち出されていますが,「よい森林をつくる」という明確で能動的な目標と比べて,「人手の掛からない森林への誘導」は立地条件への依存性が強く,結果論的で,従来の技術論とは異質に思われます。今回のシンポジウムは森林計画制度の話題が中心でしたが,もしまたこうした機会があれば,施業論も聞かせていただけたらと思います。

計画と施業が越えなければならないギャップ ‐施業研究会側企画者として‐

大住 克博(森林施業研究会事務局)

 森林計画学会から合同シンポジウムのお話があった時に、私どものような学会という形をとっていない集団に声をかけて頂いたことを、大変光栄に思いながらも、実際にどのような議論が成り立つのか、大いに不安と躊躇を感じました。
 テーマは両者の会のテーマをそのままに、計画と施業の間をどう連携させるかということ、と決めたまでは良かったのですが、しかし、これは考えてみると、私的なりわいとしての林業が衰退し、公共事業的な性格が前面に出ている現在の国内の状況下では、ほとんど日本の「林業政策策定および実施体制」をどうするか、ということと限りなく同義となります。大変なテーマを設定してしまったと、会期が近づくにつれ、後悔の念が強くなるような始末でした。最後は、計画学会側のカウンターパートであった野掘さんと、両者の乖離のあぶり出しと確認ができれば、それだけでもいいや、と腹をくくって突入した次第です。

 さて、計画と施業、両者の違いですが、多少の乱暴さをお許しいただき言い切ってしまうと、森林計画は、個々の林分を、大きなスケールでの多様な森林資源配置の中に位置づけて管理しようとし、リモセンやGISを駆使して俯瞰するという、いわば鳥の目を持っています。一方、施業は、地面を歩きながら個別の林分の事情をつついていく、蟻の目の世界です。あるいは、数値化された情報をベースに判断する計画者と、目前の林分の困った状況をどう扱おうかという現場のギャップと言ってもいいかもしれません。
 ギャップは、さらに多様な形で存在しています。森林計画という概念(学問)と計画制度の間、計画制度と施業体系の間、上位計画者と現場の間などなどのギャップです。残念ながら、私にはそれぞれの問題を一つづつ点検し、議論する力量はありません。それらは講演者の皆様の個々の議論を参考にしていただくとして(いずれ学会ニュースレターなどに記録が出る予定です)、企画者としてシンポを進めながら、私の抱いた問題意識を、二、三、記しておきます。

・ 官房学的計画制度の改善
 国全体の資源を把握し、管理政策に反映することは必要なので、森林計画が官房学的な性格は持つことは、否むべきことではありません。中央に位置し、司令塔に近いスタッフほど、計画は必需品となるでしょう。しかし、計画制度の末端にいる地域の計画者、小規模森林所有者には、計画を行う意義、メリットが分からなくなっているのではないでしょうか。白石氏の、計画制度は補助金の分配システムになっているという発言も、そのような状況を指摘したものだったと思います。個々の森林所有者が、計画制度の意義を実感できるような説得力をどうしたらもてるのか? その出口は、共同管理化や、制度の改革にあるのか、私には答えはまだ見えません。

・ それでは大規模地主=国有林ならうまく行っているか?
 国有林であれば、広大な山林を一括して所有しているので、理想的な森林計画ができるはずです。事実、過去昭和30年代以降、国有林は森林計画の充実と、それに基づく全国的な森林管理の実現に力を注いできました。しかし私は、国有林の計画はあまりに抽象概念(施業団とか齢級区分とかの)に走り、計画(資源の保続)が大流域単位に広域化したために、地域の管理者(営林署・担当区)から、現場技術者の身の丈にあった小流域内での保続という、地理的・生態系的・共同体的・社会的視点が抜けてしまったように思います。つまり「施業」や「現場」の香りがしない。そして、質ではなく量の議論になり、技術のマニュアル化が進み、計画は実行されているものの、帳簿があっていれば良いという形骸化が進んでしまったのではないか、と感じます。あぁ、この山は担当者が気合を入れて/理想を持って造っているなぁ、楽しんで仕事をしているなぁ、と感じられるような森林をもっと国有林に見たいものです。

・ 変わり行く施業への対応
 近年、森林施業の体系は、皆伐針葉樹一斉造林から、択伐、広葉樹林化、異齢林化など、多様な様態に変わりつつあります。特に、名目上の主伐を行わなくなり、それを実質的に強度間伐的なもので代行しようとする、強い流れがあります。昔のように林班は小班に分割され、その中には均質な林分(もっと言えば均質な林木)が格納されているという、自明であった、資源の空間配置の明確性が崩れつつあります。これらの森林の実態を、現場の技術者の数が乏しくなっている中で、どのように把握し、予測し、計画し、保続を図っていくかということは、結構難しい宿題でしょう。情報技術が、とりあえずそれをカバーするために整備されるのでしょうが、それによってもまた、前記のような「施業」の香りや「現場」の感覚が薄れ、計画の形骸化、形式化が進むのではないでしょうか。

 企画者としては取りとめもない「後書き」になってしまいましたが、今回のシンポであらためて明らかになった計画と施業のギャップ、逆に言えばそれを少しでも結びつけることの重要性について、今後も機会を見つけて議論を深めていただければと思います。ご意見、ご投稿をお待ちしています。

総合討論で飛び交う論議!迷走する結論?
(写真4:総合討論で飛び交う論議!迷走する結論?)


森林施業研究会・森林計画学会の合同シンポジウム開催の経緯

森林計画学会企画担当理事(〜2007年度)

野堀 嘉裕(山形大学)

 森林計画学会では春の日本森林学会大会の時期に合わせて毎年シンポジウムを開催していますが、2006年以降に私が担当した期間では下記のテーマでシンポジウムを開催してきた。
 2006年4月4日:林業経済学会・森林計画学会合同シンポジウム「森林資源の成熟下における民有林の課題」(東京農業大学)
 2007年4月4日:森林計画学会春季シンポジウム「林業情報とその計測技術」(九州大学農学部)
2006年のシンポジウムは前企画理事の東京大学の山本氏からの引継ぎで行われましたが、戦後の森林資源政策と民有林経営の問題点について両学会の立場から議論することができました。2007年のシンポジウムでは木材価格の動向を意識しつつ、鹿児島大学の寺岡氏を中心として儲かる林業について議論を深めることができました。一方、この年の森林施業研究会の懇親会には当方と東京大学の龍原氏の両名が参加し、2008年春の合同シンポジウムに関してプロポーズを行いました。その趣旨は「森林計画と施業現場との乖離の実態を把握すると同時に打開策を見出す」というものです。森林施業研究会の鈴木代表や大住事務局長らとお酒を飲みながら懇談した末、GOサインを頂いた経緯があります。その後、具体的な討論の趣旨やパネラーの選択に約9ヶ月をかけました。その後、パネラーからの講演要旨を相互に閲覧したうえで電子メールを使って相互に意見交換し、3月の合同シンポの本番にこぎ着けたのです。この間、キーワードとしての「乖離」を念頭に置きつつも「敵対的に議論しないこと」また「議論の上で予定調和はしないこと」を前提に議論してきました。その成果が、今回の合同シンポジウムとして現れたといえるでしょう。各パネラーの報告は極めて真摯で意味深い内容となりました。また、「乖離」の実態やその理由などについても少しずつ明らかになってきたものと思われます。今後、それぞれの会では更に掘り下げた議論がなされることと期待されます。森林計画学会の企画理事としてはこのような有意義な合同シンポジウムが開催できたことに対して感動すると同時に、森林施業研究会の鈴木代表や大住事務局長をはじめとして、パネラーの皆さんや会場に参加していただいた皆さんに心から感謝いたします。

 

<復活・現場からの報告>

森林官のお仕事

縣 佐知子(元森林官) 

 今回のニュースレターで、まだあまり詳しく知られていない「森林官の仕事」を紹介してくださいという依頼を受けまして、私が森林官時代にやってきた仕事を少しご紹介することになりました。現在は異動して「元森林官」となってしまいましたが、皆様にその実態をちょっとだけ垣間見ていただきたいと思います。
 でも、前もってお断りしておきたいのですが、森林官の仕事は担当する山によって、また、仕事に対する考え方によって様々なやり方がありますので、今回紹介する内容が基本形ではないことをあらかじめご了承ください。

1. 森林官の印象
まず、「シンリンカン」って?というのが一般的な国民の方々の印象だと思います。
ちょっと知っている人だと、「レンジャーみたいな仕事?」もしくは「木こりさんとは違うの?」という具合でしょうか。もしかしたら、林学をかじっている人でも「聞いたことあるけど、山で何しているんだろう?(もしかして毎日山で釣りとかしてるのか?うらやましすぎる!!)」と思っている方々も多いのではないでしょうか。
 でも、森林官を経験して私が持つようになった印象は、「山を取り巻く国民と行政とのパイプ役」そして、「山を後世に残すためのリレーランナー」という感じです(目指すところであり、達成できませんでしたが・・・)。

2.森林官の立場と任務
  次に、どんな立場で仕事をしているかについてです。昔々のその昔、木材価格が高かった時代は『お山の大将』として君臨したそうです。馬に乗って警防を腰に下げて、とっても畏れ多いお方だったとのこと。でも、今は地面を管理する『地主』の役目を仰せつかり、国有林が国民の財産として正しく利用されるよう現場に配備された、とっても腰の低い人たちです。
  そんな森林官の一番のミッションは、山の質を維持増進させるために手入れをすることです。ここでいう山の質とは、木材の品質だけではなく公益的機能も含まれていて、水源涵養機能やレクリエーション機能等も含まれています。
  山へ行く仕事としては、森林内のパトロールをして危険な区域に入っている人はいないかどうか、不法投棄や倒木、山崩れが発生していないかどうか等を見回ったりしています。また、国有地と民有地の境界を延々と確認していく仕事もあります。
  また、外交活動としては、担当区域の現場主任として関係する省庁や市町村との会議に出席して、その国有林に適する利用方法を話し合う場に出席したり、貸付契約をしている相手との書類のやり取り等もあります。

3. 具体的な仕事内容
  では、私が行った仕事の具体的例を紹介します。
・ 山の手入れの方法を考える
森林官は、山を見て回りどこの箇所にはどんな手入れが必要かを取りまとめて報告します。報告を取りまとめる時期がくると、基幹作業員歴35年のおじちゃんとともに、「この小班のこっちの斜面はダメだけど、あっちの斜面は良いから手入れしなきゃいかん」とか、「あそこはツルが多いところだから早めにツルきりしたほうがいいんだ。ちょっと見に行くべ!」とか話しながら、あちこち歩き回るのです。
 その他の情報源としては、林産会社で現役で作業する基幹作業職員のOBに「どっか気になるところある?」と聞いたりもしていました。たまに、収集がつかなくなるぐらい情報をもらい、頭を抱えることもありました。
 また、最近では二酸化炭素の吸収源として森林を整備するということで、今までは、将来材を出すことを第一の目的にしていなかったようなところも歩き回り、ああだこうだ話し合いながら山を見て回りました。

・ 立木販売のための材積調査
国有林では基本的に、立っている木を売って業者が伐り出す仕組みになっています。森林官は、木の太さと高さを調査する立木調査を行い、林小班の材積を算出して価格を算定します。
このとき、休憩時間や帰るときに山菜を採ったりするのが楽しみだったのは言うまでもありません。山の恵みに感謝して、季節の移り変わりを楽しんでおりました。このときの思い出が楽しすぎて、外部の人にこのことばかり話すので、森林官は山で山菜採って遊んでばかりいる、というイメージが広まっているように思います。

・ 森林パトロール
森林官は毎日のように山をパトロールするのですが、台風の後や雪解けの時期ともなると、本当にサバイバルでした。林道をまたいで木が倒れ掛かっているところがあったり、崩れた林道を突き進んだり、川の増水で行き止まりになったところで方向転換しようとしたら脱輪しそうになったり。
また、お天気が良くても、刃物を持った強面の山菜取りのおじさんに遭遇したり、自殺があったと聞いていた場所に車が数日停まっていたり、はたまた熊さんにばったりお会いしたり。
そして、最近多いのが不法投棄。リサイクル法ができたため山へ投げ捨てに来る人が増えたようです。林道で、マスクした人が運転する古くて汚いトラックを見かけたとき、勇気を出して車を止め、「ここは立ち入り禁止ですよー」とか話しかけると、「道に迷っちまって・・・。」なんて答える場面が何度かありました。ゲートが閉まっているのに迷って入ってくるなんてことがあるわけないだろー!と思いながら、笑顔でゲートの外までお見送りをしました。
最近、山でのマナーが低下しているとよく聞きますが、それを取り締まるのも役目でした。

・ 外交活動
私が最も力を入れていたのがこの分野です。私自身、知識が乏しいことと、人一人の力なんて本当に小さいということは切に感じていました。でも、森林官という立場では、中立の立場でいろんな意見を聞き、何がこの山にとって一番適しているのかを現場主任の意見として発言できる立場にいました。
森林官になって半年ぐらいたった頃、村役場から「観光資源として登山道を整備したいので、一度現場を一緒に歩いてほしい」という依頼がありました。その登山道は、“知る人ぞ知る”という感じの、大きな特徴は無い登山道でしたが、村長は整備する気満々で職員をせかしていたようです。
ちょうどその頃、近辺の山の愛好者が集まる会があるということで、無理やり顔を出させられました。その会にいたおばちゃんに「この辺を管理してるんだって?村が奥の登山道を整備するって話を聞いたんだけど、本当かい?」って話しかけられました。私は、まだ何も決まってないのでとりあえず知らない振りをしておきましたが、続けておばちゃんは「観光地化してきたあの山の登山道の中でも、あそこは“最後の聖地”的なところだから、そっとしておいてほしいのよね」と話してくれました。
その後、役場の方たちと現地調査をした後の話し合いの中で、私はあのおばちゃんの意見を代弁し、その内容は役場職員の共感を得ることができたようで(まだ村長はあきらめてなかったようですが)、登山道整備の話は一時休止となりました。


 どうでしょうか。ほんの数例しか紹介できていませんが、少しは森林官の仕事風景を垣間見ていただけたでしょうか?森林施業についての知識が最も重要ではあるのですが、その他にもいろんなお仕事したり、山で遊んでばかりではないことがわかっていただけたでしょうか?
 日本全国の国有林で、様々な森林官がいろんな思いで仕事をしています。もし、お近くに森林官や森林官経験者がいたら、話を聞いてみるとけっこう面白いと思いますよ。

写真5
(写真5:こんな仕事もありました‐森林総研の仕事を手伝う筆者)

 

国有林改革をめぐる最新動向と新刊書『どうする国有林』紹介

  笠原 義人(元宇都宮大学)

 林野庁が管理・経営する国有林野事業は、1970年代後半に入ると財務状況が急速に悪化します。1975年以降、毎年度損失が発生するようになり、1976年からは長期借入れ、すなわち財政投融資資金を導入しています。財政赤字が常態化しこれまでの事業の見直しが必要となります。1978年、国有林野事業改善特別措置法を制定し、経営改善に着手します。この特別措置法は累積債務を解消し、借入金なしで国有林野事業を運営する経営の健全性を確立することを目標とするもので、改善計画の策定と一般会計繰り入れ等所要の財源措置をとることとしました。しかし、ただひたすら機構縮小・人員削減だけが遂行されるだけで、債務を3兆8千億まで膨張させ、「改善計画」達成は全く不可能となり、抜本的見直し行うことになります。
 1998年、抜本的改革の検討を踏まえて、「国有林野の管理経営に関する法律」が制定されました。これまでの、国有林野法は国有財産法の特例法と位置づけされるもので、国有林野の取得等の特例を設けることを目的としています。新しい「国有林野の管理経営に関する法律」は、国有財産法の特例法としての位置づけにとどめず、「この法律は、国有林野について、管理経営に関する計画を明らかにするとともに、・・・その適切かつ効率的な管理経営の実施を確保することを目的」(同法第1条)とした、いわば国有林野の管理経営の根拠法としての位置づけに改めたのです。同法第3条で目的は(1)公益的機能の発揮、(2)林産物の供給、(3)地域振興への寄与−の3点であるとしています。戦後50年余を経て、ようやく、国有林は管理経営の根拠法を得たことになります。
 国有林野事業の改革のための特別措置法等により、1998年10月から2003年度末までの期間を抜本的改革の「集中期間」とさだめ、機構縮小、人員削減、一般会計予算繰入増等が行われてきました。
ところが、2006年5月、行政改革推進法(「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」)が小泉内閣のもとで成立し(参院本会議、賛成:自・公・他126名、反対:民主・共産・社民・他102名)、国有林野事業の解体・分割・独法化が法律で決められてしまいました。
 行政改革推進法は、「簡素で効率的な政府を実現するため行政改革を推進する」(第3条)ことを目的にしており、国の特別会計改革の一環として「国有林野事業特別会計を見直す」と言うものです。第28条で、「国有林野事業特別会計については、・・・その一部を独立行政法人に移管した上で、特別会計を一般会計に統合することについて、平成22年度までに検討するものとする」と規定しています。
 国有林野事業や財務会計のあり方が、1998年の抜本的改革で検討されつつあることを全く無視し、ただ、「特別会計改革」、「特別会計廃止」を推進するために、事業・経営形態を「独立行政法人」に移管させることまで、規定しています。さらに、行政改革推進法第50条は「国有林野事業の実施主体については、・・・その職員が国家公務員の身分を有しない法人に移行させることを検討する」としています。
 緑資源機構の廃止(2008年3月末)ともかかわって、国有林改革(「一般会計・独法化」)関連法案が、行政改革推進法が求めた実施時期を1年早めて、2009年の通常国会に提案され、2010年4月から新体制への移行が進められようとしています。
 『どうする国有林』は、このような解体・分割の危機を迎えているわが国の国有林を健全な状態に再生させ、次世代に引き継ぐために、今、私たちは何をなすべきかを、広く国民の間で議論されることを願って出版されました。森林施業研究会の各種活動に参画されておられる皆様方が、この書を手にとっていただき、議論に参加いただくことを期待したい。

新刊書名:『 どうする国有林 』、2008年5月上旬刊、リベルタ出版社、定価1600円+税
著者:笠原義人(元宇都宮大学)・香田徹也(元林野庁)・塩谷弘康(福島大学) 
目次:第1章「国有林は今」(笠原)、第2章「行政改革推進法と国有林」(香田)、第3章「国有林再建の道」(塩谷)、補論「地球温暖化防止と国有林・世界の国有林野改革」(石井寛・元北海道大学)

 

日本の森と自然を守る全国連絡会主催「国有林改革問題シンポジュウム」のご案内

 日本の森と自然を守る全国連絡会(略称:日本の森連絡会)は第1回全国集会を1988年に長野市において開催してから、昨2007年は第20回愛知瀬戸集会と、1年も休むことなく全国集会を全国各地で行ってきました。2008年は9月20日に国有林改革問題を主題に第21回全国集会を東京で開催する予定です。そこで、6月7日(土曜)には、下記の事前の学習会(プレ・シンポ)を開催いたします。2006年に成立した行政改革推進法で、国有林野事業の一般会計・独立行政法人化という「改革」の内容は、国民には殆ど開示されていません。この事前学習集会では、国有林改革を担当する国有林野部経営企画課の課長補佐に政府の行政改革の流れの中で、国有林野事業がどのような改革を検討しているかを説明していただきます。まずは、林野庁がめざす国有林の改革方向を聴き、これから、どの方向を目指すべきかかの議論・検討の糧にして欲しいと思います。 記
日 時  : 2008年6月7日(土曜) 13:30〜16:30
場 所  : 大東文化会館(東武東上線「東武練馬駅」下車、徒歩5分)
話題提供者: 中村道人氏(林野庁国有林野部経営企画課課長補佐)
演 題  : 行政改革と国有林野事業
コメント : 山本千秋氏(東京林業研究会代表)、大地俊介氏(東京大学大学院)、ほか
主 催  : 日本の森と自然を守る全国連絡会( 事務局:〒135-0016東京都江東区東陽 5-23-6-803鈴木正男方、Tel&Fax:03-3647-4424、E-mail:f6c9m4@bma.biglobe.ne.jp)

 

<編集後記>

 伐り捨て間伐後の歩きづらいヒノキの人工林の中で、人間どもが棄てた落とし文を拾った。「森林資源を油田に換える」と題するもので、かの地の住宅バブルで行き場を失った投機的な資金による先物取引や需要の高まりで高騰する原油価格を受け、さらに温暖化対策として脚光を浴びるバイオエタノールの原材料として、未利用資源である林地残材などを有効活用しようというもの。なるほど、これは林地にも、地球にも優しいかもしれないなーと読み進めると、「?」、なな何と、現在、未利用となっている我が国の森林資源(500万トン)を全て利用しても120−130万キロリットル(消費原油の2日分に相当)でしかないという。とてもとても、「油田に換える」などという話ではない。オチがついていた。どだい、金にならないから捨て伐り間伐、さらに間伐時ですら利用原木の歩留まりが極端に悪くなっている昨今のご時世、いくら石油が高いと言ったって、持ち出して、加工して、精製して、経済的にペイするとはとても思えない。落とし文の書き手は、「地球温暖化対策に寄与しない」断定していた。 実は、今から20年ほども前、北の方で同じような話しがあった。シラバカではないシラカバを牛の飼料化するプラントが作られたのだが、その後日談をついぞ聞いたことがない。あれは確か、有名なKIW牧場の一画。似てるよね。そうかと思えばペレットストーブ。薪ストーブに比べて、いたって火力が低いと不評。さらに電気代までかかるとか。このところ、地域のワンマンボスが去った高寒冷地では、薪ストーブが大人気だとか。
 森林に吸収する機能ではなく、蓄える機能を評価すべきだよね。そうすれば、俺たちにだって住宅難や餌不足が解決するもんね。本来、俺たち、徒歩と毛皮の省エネライフだから、どのみち、化石燃料の恩恵には浴さないが、温暖化と森林破壊は打撃だぞ!(狢)

森林施業研究会ホームページに戻る