木霊 (TARUSU)
森林施業研究会ニュ−ズ・レター 
No.11 2001.2.6
Newsletter of the Forest Management and Research Network

林業技術者・研究者は第6回森林施業研究会シンポジウム(岐阜大学)に多数参加を!!

今年も恒例の施業研究会シンポジウムが岐阜大学の林学会大会最終日に開催されます。今回のシンポジウムでは、持続的な森林経営・管理を実践する上で、避けては通れない機能区分と適正な配置の問題です。これまでの林業においては、土地所有ないし作業単位(林小班)で、森林管理が制限されてきました。しかし、森林の持つ多様な生態的機能、生物多様性を確保しつつ経営・管理するためには、生態系として森林の管理、すなわち「生態系管理」が差し迫った課題としてあり、景観ないし小集水域、あるいは流域といった空間スケールでの経営・管理が求められることになります。そうした課題に取り組むべく、シンポジウムに参加し、論議を深められることを訴えます。

 

第6回森林施業研究会シンポジウム

場所:岐阜大学 1C教室

日時:4月5日午前9時から12時まで

テーマ:森林の機能区分と適正配置

話題提供者:

(1)GISは森林管理にどこまで使えるのか? 伊藤 哲(宮崎大学農学部)

(2)植物の多様性から見た森林の機能評価と配置 長池 卓男(山梨森林総合研究所)

(3)機能区分と配置を考慮した森林管理の取り組み 池田 伸(関東森林管理局東京分局森林技術センター)

 

連絡先:森林施業研究会事務局

鈴木和次郎(森林総研・森林環境部)

TEL:0298-73-3211 内線221

E-mail: wajiro@ffpri.affrc.go.jp

大住克博(森林総研関西支所)

TEL:075-611-1201

E-mail: osumi@fsm.affrc.go.jp

殴りこみ大歓迎!興味のある方も無い方も

恒例の全国世話人会議(全国交流会)へ合流せよ!

 今年も恒例の施業研究会全国世話人会(全国交流会)が、研究会前夜に盛大に開催予定です。今回の話題は、第一期5年間の総括と研究会の世代交代の促進、さらに新たな施業指標林ネットワークの構築問題です。そろそろ時代遅れで、陳腐化した渡邊定元とその側近(鈴木・大住)体制を打ち破り、新たな地平を切り開くべく、第二世代がクーデターを画策する機が熟しつつあります。酒の勢いをかりて、教祖の思想性を厳しく批判し、旧守派を一掃する絶好のチャンスです。なお、今回の危険な交流会は、地元岐阜県森林研究所の横井秀一さんが宴会幹事を引き受けてくれました。地元の料理と話題、乱闘に期待しましょう。

参加希望者は、3月末日までに交流会世話人まで連絡を入れておいてください(だれも守らないので、例年幹事が困っております)。

交流会の申し込み先

横井 秀一 (岐阜県森林科学研究所)

 TEL:. 0575-33-2585

 FAX: 0575-33-2584

 E-mail: yokoi@forest.rd.pref.gifu.jp

施業研究会九州合宿、宮崎県の南郷村・諸塚村を会場に開かれる!
Y2K現地検討会(九州合宿)報告

溝上展也(宮崎大学農学部)

 2000年11月15日〜17日に,スギ素材生産量で日本一を誇る宮崎県で,「持続的かつ省力的な林業を目指した林畜複合生産:モーモー育林」をメインテーマに第3回現地検討会が開催された。宮崎県西郷村・諸塚村での山林見学の他,宮崎県林業総合センターにおいて2つの特別講演と6つのセミナー報告が実施された。参加者は,指導林家3名,県7名,国7名,大学4名の合計21名で,遠くは東北からの参加もあった。

 以下は,検討会の概要と初めて現地検討会に参加した私の若干の感想である。

 

11月15日

「特別講義:持続的森林経営とは何か-その理論と実践」渡邊代表

写真1

 午後4時半にセンターに集合した後,早速,渡邊代表の特別講演が行われた(写真1)。持続的森林経営の5つの要件(高蓄積,高成長量,高収益,多目的利用,生物多様性),防災水源かん養路網の実践や列状間伐の生態的意義についてスライド写真を用いながらの解説があった。また,人工林の取扱に関しては,列状間伐->中層間伐->着葉量と形質に基づくfuture treeの選定,という一連の作業を提示された。その内容の幾つかは誌上で目を通したことがあるが,ライブ故の多くの刺激があり,特に収益性や路網の重要性に改めて気づかされた。なお,列状間伐については,今春の日本林学会大会で報告されると聞いている。

「諸塚村における林畜複合生産の事例」宮崎大学・西脇氏
「諸塚村における帯状複層林の事例」 宮崎大学・溝上

 食堂の座敷で夕食を済ませた後,その場にスクリーンとプロジェクターを持ち込み,コップを片手にセミナーが始まった(写真2)。西脇氏からは,産・官・学共同で実施されている林畜複合生産(モーモー育林)の試験研究の報告があり,モーモー育林のメリット・デメリットが整理されていた。この詳細については,西脇氏自身による報告を参照されたい。

 引き続き私は,帯状皆伐後26年経過した複層(相)林の概要を紹介した。この林分は65年生ヒノキを交互帯状伐採した後,天然更新とスギ・ヒノキ植栽との組み合わせにより成林したものである。収穫表の値と比較してみた結果,皆伐帯の植栽木の樹高成長は悪くなく,むしろ一斉林のそれよりも良いのではないかと考えられた。植栽木の高成長が,保残帯による露出度の低下に帰因しているのか,指摘にもあった「採草地にみられる2代目造林木の特質」なのかは,現在のところ明らかではない。2段複層林の失敗事例が多いなか,今後の複層(相)林施業のモデルとして貴重な林であると確信している。なお,詳細は日本林学会大会で報告し,調査は今後ともを継続する予定である。

11月16日

 時折小雨がちらつくなか以下の行程で現地見学が行われた。

「宮崎県林業総合センター内針広混交林造成試験地視察」育林経営部・古嶋氏 (写真3)

「諸塚村の林業について:林畜複合,複層林,高密度林道網」産業課・佐藤氏

「本田隆英氏所有の林内放牧地視察」(写真4)

「帯状複層林視察」(写真5)

「吉野宮地区,吉永勝馬氏所有の林内放牧地視察」(写真6)

「戸下地区の林内放牧地視察」

「西田延運氏所有の林内放牧地視察」

「木材流通加工センター視察」

 宮崎県林業総合センターの試験地では39年生スギ人工林のギャップにスギとイチイガシ,ケヤキ,ヤマザクラ,カヤを混交植栽した試験地や上木のスギとコジイやアラカシ等の進入広葉樹を組み合わせた針広複層林試験地を見学した。参加者からは,複層のみならず複相の造成も取り入れるべきとの意見があった。広葉樹の成長特性に無知な私には,将来の林型が見えてこなかった。十数年後の結果が楽しみである。

 林内放牧地では,いずれの見学地でも植栽木への放牧による被害がほほとんど見られないことが確認できた。また,牛を入れるとシカが寄りつかないとの興味深い話もあった。下刈りが省力できるこのモーモー育林を今後普及していくには,放牧に適した傾斜限界や水飲み場を確保するための地形的,地利的条件を明確化する必要があることなどが議論された。

 帯状複層林では,「樹高の測定値記録がおかしい!」「あそこにもう一本道を入れるべきだ」との指摘に驚かされた。測高器を用いて樹高を測定したのは私自身であり,その場での目測にも自信がなかった(計測学の講義を担当しているにも関わらず,,,,)。この林分を宮崎大学の伊藤氏とともに調査していたときには林道や収益性については私の頭にはなかった。研究の幅を広げることができたのは大きな収穫である。

 

「特別講演:諸塚村における山村・林業振興」耳川広域森林組合長・甲斐重勝氏

 夕食前の一時間,諸塚村前村長,甲斐組合長による特別講演が行われた(写真7)。

<林業立村>,<モザイク林相>,<高密度路網>等で全国的にも有名な諸塚村の歴史を振り返るとともに,最近の木材・シイタケ価格の低迷が農林家の経営意欲に与える影響の大きさを力説された。戦後,当時一番の換金作物であった乾シイタケの他,用材,畜産,茶の4つの産業を柱とした複合生産により山村自立を図る努力がつづけられてきた。拡大造林の際にはスギ7割に対してクヌギを3割植栽することが奨励され,その結果としてできたのが災害にも強いといわれている<モザイク林相>である。しかし,木材・シイタケ価格の低迷はこれまでのすべての努力を「水の泡」とし,後継者がもどらず,「山村は崩壊しつつある,というよりも既に崩壊している」。渡邊代表からは「現在の路網密度約50m/haにプラス20m増やすと,大型機械の効率が最も良く,外材に勝る生産性が実現可能である」というコメントがあった。「木材価格が回復すれば過疎化は食い止められるのか?」との問いには「孫の世代以降の過疎化を阻止するには,散在している集落を2車線に整備された国道沿いに集める必要がある。」との回答であった。

 「山村にも住んだこともない,林業をしたこともない,これからもその意志のない人が理屈をこねて,,,,をやれといわれてもできない。」という甲斐氏の言葉は鮮明に記憶している。コストを度外視した取り組みは持続的(実行可能)でない。森林・林業に関わる一研究者として,現在取り組んでいること,今後すべきことを改めて自問する機会を与えてくれた。

 

「岩手県のブナ天然更新試験:27年後の成績」森林総研東北・正木氏
「不知火針広混交林における有用広葉樹の生育状況」森林総研九州・佐藤氏

 前夜同様,夕食後に座敷セミナーが行われた。正木氏は,上木伐採後間もない過去の調査結果からはブナの天然更新が成功していると判断されていた試験地の27年後の状態を調査し,ブナの更新が成功していない事実を紹介した。ここでは,「何故,ブナにこだわる必要があるのか?」や「ブナ林の成立における放牧の影響」についての意見が交わされた。

 佐藤氏は,有用広葉樹十数種について,シカやウサギによる被害の防除柵を付けた植栽木と柵を施していない植栽木との生育状態を比較し,樹種による差異を明らかにした。九州森林管理局森林技術センターの渡邊氏より,センターにおいても佐藤氏と同じような植栽試験が行われているとの紹介があった。後でセンターの概要を見せて頂いたき,実に多くの長期的な施業試験が行われていることを初めて知った。正木氏の報告に見られるように施業研究には長期の観測を必要とすることが多く,世代を越えた長期的なネットワークが不可欠である。と同時に,似通った試験の異なる地域間の比較研究も効率よく進めていく必要があろう。時間的・空間的なネットワーク作りの必要性を感じた。本来ならば,林学会大会や支部大会がネットワーク作りの拠点になるべきである。

 

11月17日

「森林の適正管理・適正配置のためのゾーニング-基礎情報の整備と応用-」宮崎大学・伊藤氏
 「針葉樹人工林の生態系管理に基づく施業・森林づくりの試み」森林総研つくば・鈴木氏

 最終日の午前中に最後のセミナーが行われた。伊藤氏は,数値地図とGISを用いた地形解析から,林地生産力と土地の脆さ(災害発生頻度)のポテンシャルを推定し,これらの2軸で,生産林,多機能型森林,保全林を区分する新たな考え方を提唱した。従来の林地生産力のみのゾーニングでは,ある単一樹種についての適地判定の域をでないが,ここでは,生産力が同一の場合でも,土地の脆さに応じて,誘導すべき林型や樹種構成は異なることとなる。今後,多様な施業や生態的管理を模索する上で重要な考え方となるであろう。議論の中では,メッシュを独立した点として評価するだけでなく,面としてとらえた場合の波及効果も考慮すべきとの指摘があった。なお,このゾーニングに関しては今春の日本林学大会最終日に開催される施業研究会においても講演されると聞いている。

 鈴木氏は,生態系管理とは約100ha〜数千haを対象とするものであり,林分管理とは異なる,と定義した後,関東森林管理局森林技術センターが実施している生態系管理の事例を紹介した。21haの試験地に5つの機能区分が経験的に行われており,機能区分ごとの林分管理では,画伐による針葉樹大径材生産,水辺林の造成,林道の法面や路肩への広葉樹の導入,林床植生の維持,倒木・枯立木の確保など生物多様性の保全に向けた取り組みが紹介された。討論では生態系管理おけるゾーニング手法や生産林の位置づけ等が問題となった。

 

以上,これまで森林の成長(モデル)や画像解析にしか興味を示さなかった私に,とても新鮮な多く刺激を与えてくれた3日間であった。

 

(九州合宿へに意見・感想1)

勉強になったのか、ならなかったのか?!

第3回現地検討会および研修会(持続的な森林経営)に参加して

                地頭所 三成(鹿児島県指宿農林事務所)

1.動機

 今回で3回目の研究会が、11月15日(水)〜17日(金)2泊3日で、宮崎県西郷村にある宮崎県林業総合センターと、諸塚村内で現地検討会が開催され参加したので報告します。

 私が研修会に参加した動機は、県庁の林業専門技術員室からの案内文書だった。私は「造林」の専門技術員資格を取得しているので、育林技術等には興味を持っていたし、また、宮崎県林業センターを一度視察してみたいと思っていた。それは、現事務所に赴任する前、県庁で林業機械関係業務を担当していたので、ぜひここの林業機械施設を見てみたかった。それから全国的にも有名な諸塚村も見てみたかったからである。

 

2.到着まで

 センターに16時30分集合になっていたので、時間に余裕をとり約5時間30分ぐらい見て、自宅を9時40分に出発した。九州自動車道から宮崎自動車道に乗り換え、高速を出たところで昼食をとり、時間的に余裕のあるつもりで日向市から国道をさかのぼる予定だったはずが、何を考えたのか地図を片手に、途中近道をしたため、道路工事中の時間規制にあい、センターに着いたのが16時頃になってしまった。やはり、ことわざどおり「急がば回れ」で普通どおりに行くのがベストだと思い知らされた。また、センター近くに来てから迷ってしまったことも予定外だった。集合時間までにはついたのでホッと一息。受付をすませ研修参加者名簿を見ると、森林総合研究所の方々が中心になっており、県の試験場の方々、宮崎県内の指導林家の方々総勢20人の参加者になっていた。

 

3.1日目の研修会

 最初の研修は宮崎大学の伊藤先生の進行で17時からスタートした。

 まず、森林施業研究会長、立正大学地球環境科学部教授の渡邊会長があいさつをして講義にはいった。これまで、第1回は「富士山麓の森林荒廃状況と林内道路開設について」、第2回は「東北地方のブナ更新の検討について」、ということで開催してきて、今回第3回目は「持続的な森林経営」というテーマでの開催であるとのこと。

 約1時間講義の後、夕食会場に移動し、食事をとりながらみなさんアルコールも程良くはいった頃、セミナー開始。私は疲れていたのでアルコールの回りが早く、調子がよかったせいかセミナーに熱が入った。参加者のほとんどがそうであったと思うが。内容は「林畜複合生産の事例」、「帯状複層林の一事例」で、スギ、ヒノキ造林地で牛の放牧による下刈り効果と植栽木の被害状況を大学の西脇先生が発表された。また、ヒノキの89年生下にヒノキ、スギの23年生、29年生が植栽されている帯状複層林試験地の紹介を溝上先生が報告された。私は内容もさることながら、資料作りがなんと上手なものかと感心した。

 その後、和気あいあいと自己紹介をしながら、夜は更けていった。アルコールがだいぶ入りいい気分で床につくと、相部屋の熊本県宇城地域振興局から出席された甲斐さんは、すでに気分よく寝入っていた。

 

4.2日目の現地検討会

 初日の夜が明け2日目。

 今日は一日中現地検討会なので、楽しい日になりそうな気がした。朝方少し霧雨だったがすぐにみんなの熱意であがった。まず現場に出る前「針広混交林の造成事例」の報告を林業センターの古嶋さんから受け、その後センター内の試験地を案内してもらった。本県にもこのような事例は実施されているが、研究をされている方々なので様々な意見があるのは当然のことと思うが、目的意識がはっきりしないとか、伐採時の邪魔になるとかいろいろな意見がでた。どうしてここまで言われなければならないのかと思った。針広混交林施業についての事例は少ないので、現場では手探りの状態なのである。もっと情報が欲しい。

 それから諸塚村内に移動し、「林内放牧」、「帯状複層林」、「耳川広域森林組合の木材加工センター」の現地を見て回った。林内放牧は見事なまでに成果が上がっており非常にためになった。17時から耳川広域森林組合の甲斐組合長から「諸塚村における山村・林業振興」という題目で講演をいただいた。前村長だけあって、まさしく山村の生活状況が語られたわけであるが、迫力があり最後は非常に感動した。鹿児島県にはこれほど厳しい環境の地域はない。その後は昨日と同じように夕食をとりながらセミナーに突入。「岩手県のブナ天然更新施業」、「不知火針広混交林における有用広葉樹の生育状況」が森林総研の正木先生と佐藤先生から報告があった。

 今宵もさんざんアルコールをくらって床にはいった。

 

5.3日目の研修会

 研修最後の日。

 「数値地図とGISを用いたゾーニング基礎情報の整備」、「森林の生態的管理の実践例」を大学の伊藤先生と森林総研の鈴木先生が発表された。伊藤先生のGISの活用は今はやりであり、さすがだと感心した。また、森林生態管理の実践例では、国有林のような大森林所有者では取り扱いが可能かもしれないが、一反あるいは二反といった小さい所有面積の民有林では、承諾などの関係もあり到底実施できないだろうし、林業改良指導員は森林所有者に説得できないだろうと思った。国が県が町が山林を買い取るのであれば話は違うが。失礼な言い方になるが、国庫事業を執行するにあたって、国有林と民有林の森林所有規模面積の違いを考慮しておかないと、事業計画は絵に描いた餅になってしまうと思う。

 研修は11時20分に終了した。

 

6.研修会に参加して思うこと

 研修会に参加する前の印象は、どんな研修なのか不安だった。というのはスケジュールを見た時、17時から講義、19時からセミナーが組まれていたため、夕食も食べないで研修をするのかと思ったからである。このような研修は初めてだったので驚いた。

 研修を終えて思ったことは、意見交換のとき、かねてから研究している方々の意見は早く、反論もされ、感心することしきりであった。また、この研修会自体の組立にも感心した。帰ってから自分が定言したいと思ったことは、林業試験場の研究者は、様々な研究をしているわけだから、常に現場に必要な技術・情報をいろんな機会をとらえて、発信してほしいということである。林業技術研修所でたくさん研修を企画しているので、宿泊研修者をとらえて、今回のように夕食をとりながら報告するくらいのことがあっても良いのではないかということである。

 この研修会に参加していろいろ勉強になり良かった。この研修会が九州管内で開催される時はまた出席したいと思う。この研修会を組み立ててくださった宮崎大学の先生方には感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

(九州合宿へに意見・感想2)

いつまでも考えてばかりではいけない!

                 山梨県森林総合研究所 長池卓男

自分に何ができるのか、そして、何をすべきなのか、を改めて考えさせられた宮崎での現地検討会でした。

今回話題となった、「林間放牧」、「人工林の樹下植栽」、そして「山村・林業振興」の共通の問題は、人工林の将来です。これまで行われてきた体系的・集約的な人工林管理、そして収益性の追求は、今後いつまで・どこまで可能なのでしょうか? 今進められている施策の技術的な裏付けはあるのでしょうか? 一体、自分はこれらの問題に対してどれだけ貢献してきたのでしょうか? そして、これから何ができるのでしょうか?

資源として考える上でも、自然環境として考える上でも、森林というものは広い公益性をもちます。公益性の高さとは、どのような人にも関心がもたれ、その恩恵が広く享受されるということでしょう。したがって、公益性の高さを維持し、確保するために、多くの税金が投入され、その多くの業務に公務員が取り組んでいるのだと思います。納税者という立場の人も含めて、広く理解を得る形での還元が自分にできているのでしょうか?

そもそもなぜ林学を目指したのかを思い起こせば、人工林をはじめとする、日本の森林・林業について考えたいと思ったことでした。現在、自分はこのことを毎日考えられる職に就いているのです。私たちはどのような森林を受け継いだのでしょうか? そして、私たちは、どのような森林を受け渡すことができるのでしょうか? 自分にできることを今やらなくては。大上段に構えているわけでは決してないのですが、研究する立場から森林を考えていく者として、また、世代を超えて共有する森林というものを考える人間として、ますます真剣に人工林に取り組まなくてはならないという思いで帰途に着きました。

宮崎大学の伊藤さん、西脇さん、溝上さん、宮崎県林業総合センターのみなさんをはじめ、多くの方々に大変お世話になりました。みなさんに厚くお礼申し上げます。

 

国有林自主研修会報告

針葉樹人工林における路網整備と広葉樹導入試験地、複層林試験地を見学して

                  石田 香織(栃木県烏山林務事務所)

先日、国有林森林官の方々の研修におじゃまして、「針葉樹人工林における路網整備と広葉樹導入試験地」及び「複層林試験地」を見学させていただきました


(写真:試験地の看板の前で、森林技術センターの職員から説明を受ける参加者)。

まず、「針葉樹人工林における路網整備と広葉樹導入試験地」を見せていただきました。ここでは国有林の木材生産機能も生かしつつ、多様な林分を作り出す試みが行われていました。この試験地は針葉樹育成区、渓畔保残区、針広二段林区、広葉樹育成区、現広葉樹区という目的の異なる5つの区域に分かれていました。

今回、最も興味深かったのは、試験地内に幅10mの作業道が整備されていたことです。その作業道は通常3m幅の林道として使用し、残った両側には広葉樹を導入していました。この作業道に沿った広葉樹林も、自然の回廊となるのです。また、収穫の際のように大型の機械が入るときには、それに合わせて両側を整備し、道幅を広げることができるのです。作業道を通常の作業道として利用するだけでなく、このように柔軟的に利用するということが私にとってはとても新鮮でした。この試験地の配置図を見ると、尾根筋(現広葉樹区+広葉樹育成区)、沢筋(渓畔保残区)に加えて、これらとはまた立地環境の異なる作業道が、回廊として試験地全域を網羅するよう配置されています。このような取り組みによって、森林がどのように変化するか、どういったところに変化が現れるか、とても楽しみです。ただ、この試験地の面積が20.99haであるのに対し、作業道が2.24haと10.7%を占めていて、果たしてこれだけの規模の作業道を一般の林分で設置できるのかというと、難しいような気がします。

近年、森林の公益的機能が重視されてきており、どういった森林をつくれば、木材生産を行いつつ、その機能が発揮することができるのかということが重要な課題になると思います。そのためにもいろいろなところでこのような試みが行われ始めているのではないかと思います。尾根筋でヒノキの生育が悪く、広葉樹が浸入している人工林はよく見かけますし、沢筋は生物多様性が高いと注目されています。この試験地ほどの規模でなくても、例えば尾根筋と沢筋に広葉樹を導入するといったところからでも、こういった取り組みをやってみたいと思いました。これら研究の成果を明らかなり、その結果が一般の森林に反映されるようになるにはしばらくかかると思いますが、大いに期待しています。

次に「複層林試験地」を見学させていただいたのですが、点状、列状、帯状、群状、魚骨型の各複層林が、上木、下木本数や帯幅等によりさらにタイプ分けされており、見ているうちにだんだん混乱してきました。林分によっては、下木の成長の悪さに驚きました。上木の密度を保ちつつ、下木の成長に適した光環境を維持する難しさを感じました。また、下木を傷つけないようにしつつ、上木の間伐や収穫するにはかなり気を遣うのではないかと思いました。いずれにしても単層林に比べ手間がかかるとは思いますが、複層林の長所、短所を考えた場合、複層林が有効なのか、どの複層林がもっとも効率的なのか、これからの森林施業の目的に適しているのか、一般的に導入するには検討が必要な気がしました。

今回2つの試験地を見せていただいて、とても興味深く、刺激になりました。これから山に入ったとき、少しでもこれまでとは違う視点で見ることができればと思います。このような研修等があれば、また是非参加したいです。

 

研究レポート

「モーモー育林」は有望な森林施業技術か?

宮崎県諸塚村で行われている林畜複合生産システムについて

                    西脇亜也(宮崎大・農)

 

<編集後記>

昨年末、オランダのハーグで開かれたCOP6(気候変動枠組条約締結国会議)が決裂した。アメリカ、カナダ、日本などが二酸化炭素排出削減目標の中でCO2吸収源としての森林の役割を算定しようと主張したためである。森林のCO2吸収能力にどれほどの科学的な根拠があるのか、はなはだ疑わしい上に、木材資源の8割以上を海外に依存し、「木喰い虫」と非難される日本が、いくら海外で植林事業を行おうが、国内の資源を保持しようが、「森林による温暖化対策」など主張できるはずもない。温暖化対策の本質(精神)は、化石燃料の消費を抑制し、二酸化炭素の排出量を少なくさせること、その代替措置として自然エネルギー、再生可能なバイオマス資源を有効に利用することなどではなかったか?もちろん、「二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー=原子力」などというのは論外である。CO2固定などというあらぬ期待を森林に持たれても林業者は困ってしまうだけではないか。それとも、「温暖化対策のための補助金」導入などということがあるのかしら?(狢)

 

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